
小児歯科と歯の再石灰化
再石灰化とは?
歯のエナメル質の表面が酸や食物によって溶かされても、カルシウムやリン酸が再び歯に吸着し、溶けた部分を修復することをいいます。
小児の生えたての乳歯、永久歯は、たいへん抵抗力が弱くむし歯になりやすいのです。
しかし、この溶けたり、修復されたりを繰り返して徐々に強くなっていくのです。
再石灰化のしくみ
この再石灰化の主役は唾液です。
唾液には、食べ物を食べやすく食塊をつくる作用、消化作用、潤滑作用など、多くの作用がありますが、歯を守る再石灰化作用もあります。
歯は、ハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウムが主成分ですが、唾液にもカルシウムやリン酸が含まれていて、これが歯の表面に吸着され、歯を再石灰化させます。
フッ素による再石灰化
フッ素は唾液中のカルシウムとリン酸を歯の表面に吸着させ、ハイドロキシアパタイトの結晶にしていく過程を促進させます。
さらにその結晶が、歯の表面を固くし、より酸に溶けにくくしていきます。
かかりつけの歯科医院では、お子様の歯にフッ素を塗りますが、3歳になってからがいいでしょう。
3歳前だとお子様のむし歯予防でフッ素を塗ることへの理解が難しいことと、さらに、3歳頃に一番奥の子どもの歯が生え終わるからです。
また、家では、フッ素入りの歯みがき剤を使用するといいでしょう。
歯みがき剤の使用はぶくぶくうがいのできるようになってからです。
ぶくぶくうがいは1歳半を過ぎたころから練習しはじめてください。
リカルデントと再石灰化
リカルデントガムは歯の再石灰化にする機能をもっています。
牛乳から抽出した、カゼインリン酸ペプチド-非晶質リン酸カルシウム(CCP-ACP)でこれが歯垢につくと歯の再石灰化に必要なカルシウムとリン酸が放出されます。
CCP-ACPを含むシュガーレスガムは初期のむし歯を再石灰化する作用があります。
ただし、ガムは4歳以下のお子さんには与えない方がいいでしょう。
再石灰化を考えた小児歯科
以前の小児歯科治療では、“むし歯を見つけたら早期に治療”が大原則でした。
「乳歯や、生えたての永久歯はむし歯の進行が早く、さらにそのむし歯が他の歯にも広まったらたいへん!」という考え方です。
ですから、嫌がるお子さんを押さえつけて、何が何でも、力づくで!という対応をしている歯科が多かったように思います。
しかし、“再石灰化”という考え方で対処していくと、“甘いお菓子を止める”ことで、むし歯の進行はだいぶ抑えられるのです。
したがって、無理やり押さえつけの治療をしなくても、歯を削らずに進行止めの薬を塗って、さらに歯に穴の開いているところにはセメントを詰めてあげて、乳歯の交換期まで歯をもたせられます。
ただし、甘いお菓子は日常的にお子さんにあげないようにしてもらいます。
フッ素については、3歳以上のお子さんには、お母さんのご希望があれば塗るようにしています。
そして、1歳半を過ぎたらぶくぶくうがいの練習をしてもらい、出来るようになったら、フッ素入りの子ども用の歯みがき剤の使用をお勧めしています。
キシリトールや、リカルデントに関しましてはとくにおすすめはしていませんが、大事なことは、
“甘いお菓子を日常的に与えずに、食べ物をよく噛む”
ことです。
“よく噛む”ことは、唾液の出もよくなり、再石灰化も促進させるだけでなく、あごも成長させ、きれいな歯並びになりやすいともいえます。
